明けましておめでとうございます。
利用者の H. T. です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
今回の内容はクラウド時代におけるデスクトップPCのあり方を考えるものになります。
少しオタク寄りの内容になりますが、技術的なワードは注釈する形で本文と分けて、少しでも読みやすくなるように心がけました。よければ、ぜひお読みください。
デスクトップPCは「個人マシン」から「高性能コンピューティング基盤」へ
ここ数年、個人としてのPC利用を振り返ると、ほとんどの作業はノートPCで行いクラウド上で完結していました。
ドキュメント作成、開発環境、データ保存――すべてがインターネット上に移行し、デスクトップPCは「オワコン」ではないかとさえ思っていました。
しかし、ここにきて考えが変わり始めています。
デスクトップPCの役割が、「単なる個人利用マシン」から「高性能コンピューティング基盤」へと変化しつつあると感じるからです。
そこで、この正月休み、親戚の付き合いもほどほどに、実際に家のデスクトップPCを整理し、OS をUbuntu Desktopに入れ替え、試したいことの環境を整えました。
Ubuntu Desktop:Canonical 社が提供する、初心者にも使いやすいとされる Linux オペレーティングシステム(OS)。GUIを備え、日常利用や開発に適する。無料で高性能、カスタマイズ性が高く、「高性能コンピューティング基盤」としてのデスクトップPCのOSとして理想的。
「高性能コンピューティング基盤」の構築として、試したかったことは以下の3つです。
- ローカルAIのホストとして
- リモートアクセス可能な個人サーバーとして
- ゲームやクリエイティブ作業のバックエンドとして
ローカルAIの実用化 – プライバシーとコスト削減の両立
最近特に注目しているのが、ローカルAI(自分のPC上で動作する人工知能)の進化です。
特に「MoE(Mixture of Experts)」と呼ばれる技術の発展により、以前なら高性能サーバーが必要だった大規模AIモデルが、デスクトップPCでも十分実用的な速度で動作するようになってきました。
MoE(Mixture of Experts): AIモデルの手法の一つ。巨大な単一モデル(Dense)ではなく、入力に応じて複数の専門家(Expert)ネットワークの一部だけを動的に選択・使用する。総パラメータ数は巨大でも推論時の計算量とリソース消費を抑えられるため、PCでのローカルAI実行を現実的なものにしている核心技術。
クラウド上のAIサービスも便利ですが、ローカルAIには明らかな利点があります:
1. プライバシー保護: 自分のデータが外部に送信されない
2. コスト問題の解消: 利用回数による課金が発生しない
3. 試行回数の増加: 開発・テスト段階では特に、気兼ねなく何度も試せる
コード生成エージェントを使った開発時、クラウドAIなら「使いすぎないか」と意識してしまいますが、ローカルAIなら自分のリソースの範囲で何度でも試せます。これが想像以上にストレスフリーです。
ちなみに、今回コード生成エージェントとして試したモデルは Qwen3-coder:30b というモデルです。これはパラメータサイズが大きいにも関わらず、MoE が効いているためか、それなりのPCでもまあまあの速度で実行できました。
Qwen3-coder:30b: アリババが開発したLLMモデル。30B(300億個のパラメータ)を持ちながら、動くときは3Bのパワーだけで処理します。これにより、高度な能力を保ったまま、素早く回答を出すことが可能。単にコードを書くだけでなく、実際にプログラムを動かしてテストを繰り返す訓練(実行駆動型学習)を積んでおり、そのため「実際に動くかどうか」を重視した、より実戦的な解決策を提案する。
リモートアクセス技術の成熟 – どこからでも「自宅のPC」に接続
「高性能PCが自宅にあるなら、外から使えなければ意味がないのでは?」
この課題も、現在ではほぼ解決されています。
Tailscaleのような新しい技術により、VPN(Virtual Private Network)の構築がかつてないほど簡単になりました。
これにより、外出先から安全に自宅PCにアクセスできる環境が整っています。
私も実際に Tailscale をセットアップして、ノートPCから自宅のデスクトップPCにアクセスできるようにしました。
通信環境次第ですが、リモートでの操作感は良好です。
Tailscale: 高速かつ安全な WireGuard プロトコルを採用した、次世代の Mesh VPN サービス。各端末を直接つなぐ仮想的な専用線を構築し、外出先から自宅のファイルサーバーへのアクセスなどを安全に実現します。従来のような複雑なVPNサーバーの構築やポート開放が不要で、個人からチームまで幅広く利用されている。
さらに、RDP や SSHといったリモート操作技術も進化し、Visual Studio Code の Remote SSH 機能などを使えば、まるで目の前にあるマシンと同じように開発作業が可能です。
RDP (Remote Desktop Protocol): 離れた場所にあるPCを遠隔操作するための通信規格。Tailscale などの VPN と組み合わせることで、インターネット越しでも「家の PC の前に座っている」のと全く同じ環境を再現できる。自宅PC側の計算リソースやファイルをそのまま使えるため、低スペックな持ち出し用端末でも重い作業が可能になる。
SSH (Secure Shell): 暗号化された通信路を確立し、遠隔のコンピュータをコマンドラインで安全に操作するためのプロトコル。
VSCode Remote SSH: 人気のコードエディタ「Visual Studio Code」の拡張機能で、SSH で接続したリモートマシンのファイルを、ローカルのエディタのように直接編集・実行できる。リモートPC の計算リソースをフル活用しながら、ローカルと同じコーディング体験を提供する。
ゲーム基盤としての進化 – Steam Link と Sunshine
ゲーマーにとっても、デスクトップPCの価値は高まっています。
Steam Linkや Sunshineといった技術により、高性能PCでゲームを実行し、
スマホやタブレット、低スペックノートPCなどで画面をストリーミング再生することが可能になりました。
つまり、最も高性能なマシンは自宅に置いたまま、状況に応じて「直接接続」と「ストリーミング」を使い分けることが可能になりました。これにより、デスクトップPCは単なるゲームプレイだけでなく、家庭内ゲームリソースの中核としての役割を担えるようになってきています。
Steam Link: Valve 社が提供する、高性能PCで実行中のゲームを、家中の別の端末(スマホ、タブレット、別PCなど)に映像ストリーミングする技術。デスクトップPCを高性能な「ゲームサーバー」 として機能させ、軽量な端末で高負荷なゲームを楽しむことを可能にする。
Sunshine: オープンソースのゲームストリーミングサーバーソフトウェア(Steam Link の代替/拡張)。
なお、Sunshine は 実機のディスプレイをキャプチャするため、SSH や RDP で行えない実機での作業をリモートで行うのにも便利です。
高性能バックエンド+軽量フロントエンド というデバイス戦略
ここで、デバイス全体の最適な役割分担を考えてみます。
最近のスマートフォンは高性能ですが、高価になってきています。同じ高性能コンポーネントを、スマホ・ノートPC・デスクトップにそれぞれ搭載するのは非効率的ではないでしょうか?
むしろ、高性能なコンピューティングリソースをデスクトップPCに集中させ、外部から軽量な端末(中古のタブレットやエントリーモデルのノートPCなど)からリモート接続して利用する。この「バックエンドに高性能デスクトップ、フロントエンドに軽量端末」という構成が、コストパフォーマンスと利便性の両面で優れた選択肢として考えられます。
おわりに
クラウド全盛の時代だからこそ、手元で自由に扱える強力な計算資源を持つことは、学習や開発において大きな武器になります。もちろん、これはあくまで私個人の見解であり、間違っている可能性もあります。技術の進化は速く、来年にはまた違った景色が見えているかもしれません。
……と、偉そうなことを書いてきましたが、この理想の環境を完成させるには、もっと強力なパーツ(GPUなど)が必要です。
そんなわけで、今年も就職活動を頑張り、もっと強いデスクトップPCを組むことを目標の一つに頑張りたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願いいたします!
